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小川町の歴史的にも重要な旧比企銀行を再生しようと活動しています。
このページの内容は、計画を進めながら更新していきます。
ヒキギンコウ~movement bank~
地域の小さくて重要な文化活動を貯蓄(活動のアーカイブ化)していき、地域の財産として共有し学び合える場所。
下記は、KIWI architectsと旧比企銀行との関係を記した文章です。
●過程の建築
はじめに、このプロジェクトを通して、私たちは変化の過程の中にあるような建築を作ろうと考えています。C.アレグザンダーが「時を超えた建設の道」で語る「無名の質」を、建築活動全体を通して、掴んでいき続けるような試みです。循環の流れの中にあり続けるような時間・道具のように関係性を再構築していく技術・多様なプレイヤー同士で変化を受け入れていく計画。修士の頃に考えていたことを、現実の町でどのように実践していけば良いかを思考/試行しながら、私たちは、建物をただ再生するだけでなく、この「過程の建築」として、そして、その環境づくりのための基盤をこの町につくろうとしています。
●町からの学び
「過程の建築」とは、ある1つの完成を目指さず、過程の中にあり続ける建築です。それは、様々な環境や活動が関与しながら、組み上がり現れてきます。自分たちはその中で、度々に構造を与えながら、舵を取っていくような役割を目指しています。そして、この町に来てから、一見建物の設計には関わらないようなことでも、町に暮らす1つ1つの体験から、目指す建築を作ることにおいて、重要な学びを得ている気がしています。それは、環境の中に身を置き循環を体現していくことや、今ある技術や関係性を組み合わせながら創造性を保っていくこと、一緒に物事を作る人たちとの持続的で良い関係性のあり方について。食卓を囲み、その食材や作り手について気兼ねなく話せる環境がありました。
●埼玉県小川町
2020年2月、友人が営むツキという宿の改修の手伝いに、埼玉県小川町にやってきました。街並み/川辺の緩やかな時間が流れていました。この時、歴史があるが、長年空き家で借り手が見つからなければ壊す予定の古い建物を見せもらい、ここを3人で借りて小川町の拠点にしていこうという計画が始まりました。そして、1人は現在地域おこし協力隊になり、町の中での関係性の中に入り込みながら、活動の土壌を探り、耕しています。小川町の魅力は、地理/商都の歴史/和紙/有機農業/そして過去現在と活躍する人々が織り成し育んできた文化です。この単一ではなく、複雑な関係性に対して、魅力と同時に、まだそれらを組み上げていく土壌があるように感じています。
●町のプレイヤーに
地域おこし協力隊では、建築とは全く関係のないようなことをしています。「小川町情報スモリバ」というLINEメディアでの発信と、「若者未来会議」という若者が集まり町の課題などについて話し合い実践をする組織の運営に関わっています。ただ、取材等を通して町の中での様々な職種や分野の人たちと関わりを持つようになり、下の世代との繋がりを持って一緒に成長していく環境づくりの重要性を感じるようになりました。また、協力隊の繋がりでイベントを企画することや、イラストを描いたり、演奏をしたり、自分の持つ能力を多方向に接続させながら活動や仕事をしていき、1つ1つが自分たちの生活基盤を耕していくことに繋がっています。
●旧比企銀行
130年以上前、小川町が商都としてとても栄えており2つの銀行が同時に建てられました。旧比企銀行は、その歴史を現在にも残す貴重な建物です。そして、この場所を「市民の文化活動を貯蓄し、学びあえる場をつくり続ける文化の銀行」に再生しようと取り組んでいます。「過程の建築」の中で、そこに関わる人同士も育っていくような学びあう「学校」として、また、小川町という「市」で栄えた都市構造の中で改めて「市場」について考えていくことも重要だと考えています。そして、そのシームレスな空間関係について、本改修の前段階から定期的にマルシェを開き、その実践を重ねています。
●マルシェを通して
最初は町分散型マルシェの1会場としての出店の誘いがきっかけでした。実際にイベントを開いて人を集めることで、建物の前に広がる広場、車があまり通らない細い裏通りなど、屋外も一体として公園のように使っていく場所のポテンシャルが見えてきました。それから自主的にもマルシェを開き、飲食のお店と野菜販売の農家さんをベースに、体験や物販、トークショーを開いたりしています。毎回色々な方の出店や、協力してくれる方の関係から生まれる時間は、空間・運営の面で少しずつ発見を与えてくれます。一時的にでも場に変化や出会いが生まれるこのような時間は、今後も繰り返しつくっていきたいです。
●ものづくりを通して
現在は催しごとに、空間に関与する制作も行っています。地元の特殊家具製作会社の方などにお世話になりながら、現在の状況や地域にある技術で組み合わせながらできるものづくりを試しています。また、その制作物がどのように空間に関与していくかも重要です。「過程の建築」をつくる中で、自分たちの役割は、形・構造を与えて進む方向の舵取りをすることです。今は、屋根をかけることや吹き抜けを作ること、縁側をステージに見立ててみることなどにより、空間に変化を与えて、使い方や過ごし方など、どのような光景になるかを検討しています。そして、この一連の制作活動に、町の中でどう価値をつけていくかが重要です。
●漸次的な空間の試行
現在は、空間的実践を試しながら、マルシェを繰り返しています。最近では、「北裏St.」という小さな通りの仲間と、道を横断するようなマルシェを企画しました。ここでは通りという一帯の空間を発見/試行して、町に対してアクションを起こしています。人が集まる場を催し、回ごとに少しずつ空間の変化を与えてみながら、その場がどのように変化していくかを試す。この漸次的な建築活動を通して、建築設計だけでない様々な活動が関与してこの場所を育てて、そこから見えたことから、これから本改修において挿入する新たな構造と運営を定めています。この繰り返しのような建築活動を継続することで、「過程の建築」が生まれ、町に少しずつ変化を与えていきます。